Smiley face
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出征する夫の優三(仲野太賀、右)と寅子(伊藤沙莉)=NHK提供

 NHK連続テレビ小説「虎に翼」が最終週を迎えました。日本初の女性弁護士、後に裁判官となった寅子(ともこ)を主人公に据え、原爆裁判、性差別、少年法といった硬派な社会問題を扱う一方で、さまざまな登場人物の心の機微が日々、丁寧に視聴者の胸に届けられてきました。その一翼となっているのが、作曲家の森優太さんによる柔らかな風合いの音楽の数々です。

 音楽はほぼ独学の森さん。芝居の音楽で下積みをし、映画や深夜帯のテレビドラマでの経験を経て今回、朝ドラという大舞台で羽ばたきました。「虎と翼」にどんな祈りを託したのか。「You are so amazing」の誕生秘話も含め、森さんが新聞では初めてというロングインタビューでたっぷり語りました。

 ――森さんの静かな音楽は、時に沈黙を想起させます。言葉にできない思いを優しく代弁してくれることもある。「虎に翼」の世界観に、森さんの音楽は大きな貢献をしていると感じます。

 「虎に翼」は役者さんの演技も脚本も本当に素晴らしいので、とにかく解釈の広がりを邪魔したくありませんでした。

 「ここは悲しいぞ」みたいな音楽をかけちゃったら、それだけでここは「悲しい場面」ということになる。それって僕、音楽の暴力だと思うんです。

 音楽には人間の感情をコントロールする力がある。うまく使えばどんな感情にだって誘導できてしまう。でもそうじゃなく、役者さんたちと一体となって、それぞれのシーンを包む響きをつくれたらいいなと思いました。どんな感情を抱くかは、観(み)る人の自由に委ねて。

 心がけたのは、ひとつの感情を増幅するのではなく、さまざまな情感を無限に誘発するサウンドです。

 ――もともと音楽が好きな少年だったのですか。

 高校時代、ブリティッシュ・ロックが好きなサブカル少年で、兄や友達とバンドをやっていました。中古で多重録音専用の機械を買って、遊んだりもしていました。ただ、いずれも遊びの延長で、自分からあふれでてくる音楽みたいなものは特になくて。

「虎と翼」の現場では、シンクロがあちこちで

 そのころ映画を観るようにな…

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